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肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)とは

更新日:2025/01/10

肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)とは

 まず、非結核性抗酸菌(non-tuberculousmycobacteria:以下NTM) とは、抗酸菌という細菌のグループのうち結核菌を除いた抗酸菌を総称したもので、現在200種類以上が同定されています。NTMによる感染症を非結核性抗酸菌症(NTM症)といいますが、その中でもマイコバクテリウム・アビウムとマイコバクテリウム・イントラセルラーを原因菌とした感染症90%程度と多いことから、それらを合わせてMAC(マイコバクテリウム・コンプレックス)症と呼び、肺に好発しやすいことから肺NTM症(肺MAC症)と呼んでいます。次いで、肺NTM症をきたす原因菌として多いのがマイコバクテリウム・カンサシーで、この原因菌による肺感染症は岡山県において多くみられます。

NTMはどこにいて、どんな人に多くみられるの?


 NTMは水や土壌の中などの身近なところにいて、知らないうちに感染します。中高年のやせ型の女性に多くみられます。また、肺に基礎疾患がある人、免疫抑制剤の治療を受けている人も罹患しやすいといわれています。

肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)①

結核との違いは?


 結核と違って、NTMはヒトからヒトへ感染しません。そして、進行は患者さんによって異なりますが、多くは緩やかに進行します。

症状は?


 多くみられる症状としては長引く咳や痰があげられますが、血痰も時にみられます。他には全身倦怠感や微熱が続くこともあります。ただ、注意しなければならないのは3人に1人は無症状で健康診断や他の疾患の経過観察中に偶然見つかる患者さんもおられます。
肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)②

どのようなタイプの病型があるの?


 肺NTM症(肺MAC症)は大きく2つのタイプに分けられます。1つは結節・気管支拡張型でこれが大半を占めており、非喫煙者でやせ型の中高年女性に好発します。もう1つは線維空洞型で肺結核に類似した画像所見を呈し、喫煙男性や呼吸器系基礎疾患を有する患者に好発します。一方、カンサシー症の画像所見は肺結核に類似していますが上葉に薄壁空洞を呈することが多く、喫煙男性に好発します。

診断方法は?


 2008年に日本結核病学会が示した診断基準があります。2つの基準(臨床的基準と細菌学的基準)があり、両者を満たした場合に確定診断されます。肺NTM症が疑われた場合、①胸部X 線および胸部CT検査、②MAC菌に対する抗体検査、③喀痰抗酸菌検査(PCR検査も含めて)を実施しながら診断を進めますが、喀痰が出ない場合や診断が難しい場合には気管支鏡検査も実施します。

肺NTM症_チェックリスト



執筆者

副部長(准教授) 小橋 吉博 Yoshihiro Kobashi
専門分野 呼吸器疾患一般、感染症、抗酸菌感染症

認定医・専門医・指導医 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医、日本感染症学会専門医、日本結核病学会結核・抗酸菌症認定医

出身大学
川崎医科大学 S61.3 卒業

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