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肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)の治療について

更新日:2025/01/10

肺非結核性抗酸菌症 (肺NTM症) の治療について

どういった症例に治療するの?


 明らかな治療の開始基準はありませんが、個々の患者さんの病気の状態や希望などを総合的に判断して患者さんと相談しながら開始します。従って、診断された全例に治療をするわけではありません。

肺非結核性抗酸菌症の治療について③

治療する場合はどういった内容なの?

 
 2023年6月に学会が成人肺MAC症(肺NTM症)化学療法に関する見解を発表しました。
 治療の基本となる薬剤はクラリスロマイシン(CAM)もしくはアジスロマイシン(AZM) 、リファンピシン(RFP) 、エタンブトール(EB)の3剤となりますが、使用する薬剤の種類や量は病型によって大きく3つに分けられます(①空洞のない結節・気管支拡張型、②線維空洞型、空洞を伴う結節・気管支拡張型、③治療を半年以上実施しても細菌学的効果が不十分な患者) 。②、③の症例に対してはアミノグリコシド系という注射の抗菌薬(ストレプトマイシン(SM)やアミカシン(AMK)を併用します。
 また、3つの内服薬による治療で改善がみられない場合、最近はアリケイスという吸入薬による治療を併用することもあります。また、肺カンサシー症の治療内容に関しては、CAM、RFP、EB を用いた併用療法を推奨しています。

肺非結核性抗酸菌症の治療について①

どんな副作用があるの?

 
 
肺NTM症の薬物治療は複数の薬剤を長期間にわたって投与するため、従来の抗菌薬に比して出現頻度も多くみられます。代表的な薬剤の副作用は以下に示しますが、気になる場合は速やかに医師または薬剤師に相談してください。
①CAM: 消化器症状(口内炎、食欲不振、嘔吐、腹痛、下痢など)
②RFP: 発熱、 皮疹、 肝機能障害、 血球減少
③EB: 視力低下、色覚異常
④SMもしくはAMK : 聴力障害、耳鳴り、めまい


治療はいつまで続けるの?

 
 2023年6月に発表された学会の治療指針では、喀痰において菌の陰性化が確認されて最低12か月以上の治療期間が必要と述べられていますが、患者さんによってはさらに長期間治療を要することもあります。

最後に


 肺NTM症は近年増加傾向で、患者数は結核患者さんよりも多いとされています。実際、2020年には肺NTM症による死亡数が結核よりも多くなっており、高齢化が進む日本では肺NTM症による死亡数が今後さらに増加することが予想されます。


執筆者

副部長(准教授) 小橋 吉博 Yoshihiro Kobashi
専門分野 呼吸器疾患一般、感染症、抗酸菌感染症

認定医・専門医・指導医 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医、日本感染症学会専門医、日本結核病学会結核・抗酸菌症認定医

出身大学
川崎医科大学 S61.3 卒業

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