皮膚科は皮膚や粘膜に発疹を生じた患者さんについて、診断と治療を行い、スキンケアのアドバイスを行う診療科です。患者さんは新生児から高齢者までとあらゆる年齢にわたり、頭から足の先まで全身の皮膚をみるだけでなく、毛髪、爪、汗の疾患も扱います。病変が皮膚だけに限られる場合と、皮膚は全身の鏡と言われるように全身疾患の症状として皮膚病変が現れる場合があります。発疹の原因は多岐にわたるため、正確な診断を下すためには専門的な検査が必要です。視診による診断を病理組織学的に確定するためには皮膚生検が必須であり、接触皮膚炎の診断には貼付試験が必要です。皮膚疾患の多くは外来通院治療で対応できますが、全身症状が強い場合や手術が必要な皮膚腫瘍などでは入院治療を行います。
特徴・特色
超高齢社会に対して
皮膚病変を示すあらゆる疾患が治療の対象となります。細菌・真菌・ウイルス感染症など頻度の高い疾患のほかに特に力を入れているものを紹介します。
- 免疫アレルギー性皮膚疾患・膠原病・酒皶(赤ら顔)
- 接触アレルギーや薬剤アレルギーでは積極的にパッチテスト・プリックテストなどを行い、アレルゲン、接触源、原因薬剤を決定するよう努めています。薬剤アレルギーの不安がある方には適切なアドバイスをすることもできます。強皮症、皮膚筋炎、エリテマトーデスなど膠原病は皮膚のケアを要する場合が多く、内科と連携して多数の患者さんの治療にあたっています。酒皶(赤ら顔)に対しては1%メトロニダゾール(院内製剤)を行っています。難治性アトピー性皮膚炎、蕁麻疹に生物学的製剤を行います。
- 難治性皮膚疾患(乾癬など角化異常症、天疱瘡など水疱症や遺伝性皮膚疾患)
- 乾癬の治療は画一的であってはならず、症状に応じて外用療法・光線療法・内服療法などを単独もしくは組み合わせて、最も適切な治療法の選択を行います。当院は乾癬治療薬として認可されたTNF-α阻害薬、抗IL12/23p40抗体、抗IL17A抗体、抗IL17RA抗体の使用承認施設であり、重症の乾癬、膿胞性乾癬、関節症性乾癬の治療にも対応しています。水疱症は蛍光抗体法・ELISAによる正確な診断とそれに基づいた適切な治療を行います。当院では、血症交換療法、大量γグロブリン療法、リツキシマブ療法など各種補助療法を行っています。角化症・先天性表皮水疱症をはじめとする遺伝性皮膚疾患については川崎医科大学・同附属病院倫理委員会の承認を得て遺伝子解析を行っています。
- 皮膚腫瘍(有棘細胞癌、悪性黒色腫などの皮膚がん、脂肪腫などの良性腫瘍)、皮膚外科
- 皮膚悪性腫瘍は、悪性黒色腫(メラノーマ)、有棘細胞癌、基底細胞癌、乳房外パジェット病、血管肉腫、メルケル細胞癌など多岐にわたります。疾患によって、または個々の症例によってもそれぞれ治療法が異なりますので、まずは皮膚生検やダーマスコピー、CT・MRI・超音波検査などにより的確な診断・ステージングを行います。治療は手術療法(切除および植皮や皮弁による再建)から免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などを含めた化学療法・放射線治療に至るまで一貫して当科が担当し、個々の症例に応じて最適な治療を選択または組み合わせて施行します。皮膚悪性腫瘍ではセンチネルリンパ節生検の有用性が示されており、当科でも施行可能です。血管肉腫やメルケル細胞癌など、あるいはほかの皮膚悪性腫瘍でも切除が困難な場合には放射線科(治療)と協力して放射線治療を行います。
また、緊急入院、場合によってはデブリードマンや切開排膿などの緊急手術が必要な蜂窩織炎や壊死性筋膜炎、皮下膿瘍など、また、皮膚外科的治療が必要な陥入爪やケロイドなどの診療も積極的に行っています。
診療部長・責任者
- 部長(教授) 青山 裕美 Yumi Aoyama
認定医・専門医・指導医 日本皮膚科学会皮膚科専門医
- 出身大学
- 岐阜大学 H1.3 卒業
主な対象疾患
関係する症状
- かゆい、赤い発疹がでる
- 蕁麻疹、湿疹、かぶれ、虫刺され、薬物アレルギーをはじめ多数の疾患があります。
- かゆくない赤い発疹がでる
- 乾癬、膠原病、リンパ腫、薬物アレルギー、梅毒などを見分ける必要があります。
- 痛い発疹がでる
- ヘルペス、帯状疱疹や細菌感染症が代表的で、時に皮膚腫瘍のことがあります。
- 皮膚がかわき、かゆい
- アトピー性皮膚炎や老人性乾皮症、透析中の方でよくみられます。
- 顔が赤くなる
- かぶれのほか光線過敏、膠原病、体質的なもの、などを見分ける必要があります。
- ぶつ、しこりができる
- 皮膚の腫瘍、粉瘤、サルコイドーシスなどの肉芽腫、リンパ腫、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染などさまざまな原因があります。
- イボ・うおのめ
- イボはウイルス感染で、うおのめは硬い靴をはく人にみられます。
- 打ち身のようなものがでる
- 紫斑は血液、内臓の病気と関連することがあります。
- 毛がぬける・はげができる
- 円形脱毛症のほかいくつかの脱毛症があります。
- みずぶくれができる
- ウイルス感染、細菌感染やかぶれによることが多く、自己免疫性におこることもあります。
- ほくろ
- 足の裏のほくろは黒色腫という、がんと見分けることが必要です。
- 皮膚に白い斑点がでる
- 尋常性白斑のことが多く、癜風でもみられます。
- 皮膚に褐色の斑点がでる
- 母斑(ほくろ)のほかに癜風、肥満細胞腫などを見分ける必要があります。
- 足に潰瘍ができる
- 静脈の循環障害による場合が多く、その他、膠原病、血液疾患などでもみられます。
- 足のかわがむける、かゆい
- 水虫やかぶれで起こります。
- 股にかゆい発疹がでる
- 真菌感染(たむし)のほかに疥癬、ケジラミなどをみわける必要があります。
- 爪が厚くなる、白くなる
- 爪の水虫であれば飲み薬で治ります。
- 汗がとまらない
- 手足の多汗症とわきの下の多汗症があります。
治療している主な病気
- 湿疹・皮膚炎
- アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、慢性湿疹、痒疹など
主な症状 かゆみ、発疹など
パッチテストでかぶれの原因がないかを調べます
- 帯状疱疹
- 口唇ヘルペス、性器ヘルペス、カポジ水痘様発疹症、水痘、帯状庖疹など
主な症状 小水庖、痛み、発熱、リンパ節腫脹など
- 細菌感染症
- 蜂窩織炎、単毒、伝染性膿痂疹(とびひ)など
主な症状 発赤、痛み、発熱など
飲み薬、点滴による抗生物質で治療を行います
- 乾癬
- 尋常性乾癬、関節症性乾癬、乾癬性紅皮症、膿庖性乾癬など
主な症状 発疹、鱗屑、関節痛など
塗り薬、飲み薬、光線療法、注射による治療を行います
- イボ、ミズイボ
- 尋常性疣贅(イボ)、伝染性軟属腫(ミズイボ)など
主な症状 発疹など
スピール膏・液体窒素療法などで治療します
ミズイボは摘除します
- ウオノメ、タコ
- 鶏眼、胼胝など
主な症状 発疹、痛みなど
スピール膏とケズリを繰り返して治療します
- 水疱症(水ぶくれ)
- 水疱性類天疱瘡、尋常性天疱塘、落葉状天庖瘡など
主な症状 水ぶくれ、傷、痛みなど
皮膚生検による診断を行った後、治療します
- 水虫、爪の水虫
- 足白癬、足爪白癬、股部白癬、手白癬など
主な症状 皮がむける、爪が白くなる、かゆみなど
塗り薬、飲み薬による治療を行います
- 脱毛症
- 円形脱毛症など
主な症状 毛が抜けるなど
外用療法、局所免疫療法のほか、急速に脱毛が進行する例には入院による点滴治療も行います
- 酒皶(赤ら顔)
- 酒皶、酒皶様皮膚炎など
主な症状 顔が赤くなる、火照る、かゆい、ひりひりするなど
1%メトロニダゾール軟膏の外用による治療を行います
- 膠原病(リウマチ)
- 強皮症、皮膚筋炎、エリテマトーデスなど
主な症状 皮膚が硬くなる、力が入りにくくなる、発疹、発熱など
場合によっては入院による精査を行い治療方針をたて、生活指導を行います
- 皮膚腫瘍(ほくろ、メラノーマ、皮膚がん)
- 悪性黒色腫(メラノーマ)、色素性母斑(ほくろ)、有棘細胞癌・基底細胞癌(皮膚がん)など
主な症状 しこり、傷ができるなど
良性のものや小さなものは外来で切除します
大きなものや悪性のものは入院のうえ切除・再建術を行います
抗がん剤やがん免疫療法も積極的に行っています
- 下腿潰瘍
- うっ滞性皮膚潰瘍、血管炎など
主な症状 傷ができる、痛み、しこり、発疹など
原因について精査を行いその結果に基づいて治療を行います
- 薬疹・薬剤アレルギー
- 薬剤アレルギー(薬の副作用による発疹)など
主な症状 発疹、かゆみ、水ぶくれ、発熱など
重症の薬疹は入院治療が必要です
原因薬物が何であるかをパッチテストや内服試験で調べます
専門診療・専門外来
- 皮膚がん・メラノーマセンター
(皮膚腫瘍・皮膚外科) - メラノーマなどの皮膚がん、脂肪腫などの良性皮膚腫瘍の診断、及び治療(手術、化学療法、放射線治療)を一貫して行っています。また、緊急手術が必要な場合も含め、重症皮膚感染症、やけど、陥入爪など皮膚外科的対応が必要な疾患にも積極的に対応いたします。
- 乾癬
- 塗り薬による外用療法のほかに、紫外線を当てる光線療法、飲み薬による内服療法、最新の治療法である生物学的製剤による治療を行っています。特に関節痛を伴う関節症性乾癬は、関節の変形をきたす前の早期に治療を行うことが重要です。
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アトピー性皮膚炎
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アトピー性皮膚炎は様々な原因で悪化し、個人差があります。必要な検査を行い、重症度に応じて外用療法から最新の全身療法までガイドラインに準じた治療を行います。地域のクリニックとも連携し診療を行っています。
≪外用指導、光線療法、シクロスポリン、Dupilumab, JAK阻害薬≫
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脱毛
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円形脱毛症や瘢痕性脱毛症は、原因不明の疾患です。当院では、重症度に応じてガイドラインに準じた脱毛症の治療を行っています。地域のクリニックとも連携し診療を行っています。
≪ステロイド局所注射、光線療法、ステロイドパルス療法、非特異的免疫療法、JAK阻害薬≫
受診の際のお願い
- なるべく脱ぎ易い衣服を着て来院してください。
- 使用している塗り薬があれば持参してください。
- 内服中の飲み薬・漢方薬・健康食品があれば持参してください。
- 顔に発疹がでている方はできるだけ化粧をしないで来院してください。
- でたり、ひいたりする発疹はデジカメで撮影したものがあれば受診時に発疹が消えている時など参考になります。
実績
2022年度
患者数(延べ) | 外来患者数 | 18,758人 |
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入院患者数 | 4,218人 |
詳細は年報をご覧ください。
特殊検査
黒色腫のセンチネルリンパ節生検を行っています。