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感染症とは

更新日:2024/01/10

感染症とは

”新しい”コロナウイルスの出現は約4年前でした


 2019年までコロナウイルスは、通常の「感冒」(かんぼう:いわゆる「カゼ」)の原因でした。ただし例外的に、動物のコロナウイルスが変異して人に重い病気を引き起こしたことがありました。2002年末に中国広東省で発生したSARSコロナウイルス、2012年にサウジアラビアで発生したMERSコロナウイルスがそれに該当しますが、これら2つの病気は幸い日本で流行がありませんでした。しかし、2019年末に中国湖北省武漢で発生した新型コロナウイルス(SARS‒CoV‒2)は、日本も含めた世界中で大流行(パンデミック)となりました。
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わが国も経験したパンデミック


 わが国における新型コロナウイルス感染症(COVID‒19)の最初の患者さんは、2020年1月に報告された武漢へ渡航歴のある人でした。まず、ダイヤモンド・プリンセス号への対応や渡航の制限など水際対策が中心に行われました。その後、国内でも感染は拡大し、全国の学校一斉休業や緊急事態宣言は、皆さんの記憶にも鮮明なのではと思います。私たちがこれまでに経験したことのない感染症の脅威でした。大人の日常から子どもたちの学校生活まで、すべての人々がこの感染症の流行により大きな負担を強いられました。

治療と予防


 「手洗い」「咳エチケット」「密を避ける」などは、あらゆる感染症の予防に有効ですが、COVID‒19の流行により万人の知るところとなりました。パンデミックが始まった頃、この病原体に有効な薬剤はひとつもなかったですが、2020年5月にレムデシビルという薬が使えるようになりました。その後、薬剤の種類は増えましたが、インフルエンザと比べるとまだまだ広くは使用されていない状況です。わが国でワクチンの接種が始まったのは2021年2月、パンデミックが発生して1年を経過した頃でした。まず医療関係者への接種が始まり、高齢者、基礎疾患のある人、さらには国民の皆様すべてへと対象が拡大されました。
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変異するウイルス


 COVID‒19の病原体であるSARS‒CoV‒2は、その遺伝子が変異するウイルスです。最初に武漢で発生したものから、流行するウイルスのタイプは何度も変化しました。2021年5月大型連休頃のアルファ株、同年夏のデルタ株など大きな流行の主体となった、よく知られた名称の変異株もあります。ウイルスが変異すると、それに対応する免疫力ともズレが生じます。すなわち、一度罹かかった後、異なるタイプのウイルスに再度罹かかったり、ワクチンで付いた免疫が十分に働かないということがあります。同様にしばしば変異する病原体としてインフルエンザウイルスがよく知られていますが、SARS‒CoV‒2は変異した異なるウイルスが1年の間に何度も流行したりして、変異の頻度が高い印象がありました。

オミクロン株の流行と5類感染症への移行


 2022年初頭から流行しているウイルスは、オミクロン株です。オミクロン株の感染力は強く、多数の患者さんが発生しました。しかし幸いに、肺炎などの合併症を起こすリスクは、アルファ株やデルタ株に比べて頻度が低いことがわかっています。また、罹患やワクチン接種により、私たちの多くはSARS‒CoV‒2に対する免疫を持つようになりました。これらのことを踏まえて、COVID‒19は2023年5月から感染症法上の5類感染症、すなわちインフルエンザなど他の感染症と同様の位置付けとなりました。

執筆者

部長(教授) 中野 貴司 Takashi Nakano
専門分野 小児科、感染症、予防接種、国際保健

認定医・専門医・指導医 日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本感染症学会専門医・指導医、ICD制度協議会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)、国際渡航医学会認定資格、臨床研修指導医

出身大学
信州大学 S58.3 卒業

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