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加齢黄斑変性

更新日:2020/08/05

網膜のはたらき

網膜は「神経網膜」と「網膜色素上皮」の2つの組織で構成されています。
それぞれ異なるはたらきを持っており、「神経網膜」は光を受け取り脳に伝え、「網膜色素上皮」は栄養の供給、老廃物の処理など、「神経網膜」のメンテナンスを行っています。

加齢黄斑変性_網膜のはたらき

加齢黄斑変性とは


身の回りの光が眼の中に入ることで、私たちは物が見えるようになります。
このため、暗闇では何も見えません。
この光を受け取るのが網膜と呼ばれる神経で、この暗闇の中央に「黄斑」と呼ばれる部分があります。
「黄斑」は視界の中央の見え方を担当しており、明るい場所での見え方や色の識別を行う神経(錐体細胞)があるため、物を見るための最も重要な部分になります。
眼の機能を評価する代表的な検査の一つに視力検査がありますが、これは「黄斑」の機能を評価しています。

加齢黄斑変性は、老化などの原因により「黄斑」に異常が起こる病気です。
黄斑は物を見るための重要な部分であるため、異常が起こると深刻な視力の低下を引き起こします。
この病気は、欧米では以前より失明の原因となる代表的な病気として知られていましたが、日本では比較的少ない病気でした。
しかし、最近では日本においても高齢化や食生活などのライフスタイルの変化に伴い患者数が増加しており、失明を引き起こす原因第4位の病気となっています。

加齢黄斑変性_チェックリスト

加齢黄斑変性の種類と原因


加齢黄斑変性には、「滲出型」と「萎縮型」の2つのタイプがあり、どちらも網膜色素上皮の機能が低下することで起こる病気と考えられています。
原因としては、老化、人種、性別、疾患感受性遺伝子などの遺伝因子や光曝露、喫煙、食生活といった環境因子など様々なものが関係すると言われています。

滲出型加齢黄斑変性


日本人を含むアジア人に多いタイプです。
網膜色素上皮の機能が低下することで脈絡膜新生血管と呼ばれる異常な血管が生じ、この異常な血管が出血や浮腫を引き起こし神経網膜が障害されることで視力が低下します。
このタイプは、突然見えにくくなり、進行が速く、様子を見ていると深刻な視力低下を残してしまうので、早急な治療が必要となります。

萎縮型加齢黄斑変性


欧米人に多いタイプです。
網膜色素上皮の機能が低下することで神経網膜のメンテナンスが十分できなくなり、神経網膜が障害されることで視力が低下します。
このタイプは、進行が遅く、異常な部分が視界の中央に及ばない限り、深刻な視力低下になりません。
ただし、萎縮型から滲出型に変化することもあるため、日頃から見え方をチェックすることが大切です。

自覚症状と見え方

視界の中央が歪んだり、暗く見えたり、見えない部分ができたりします。
このような症状が出ると、見たい部分が見えにくくなるため、文字を読んだり、物を書いたり、また遠近感が失われることでスポーツなどをすることが難しくなります。
更に症状が進行すると、視界の中央が見えなくなるため、顔を見分けることや、料理、運転ができなくなるなど、日常生活に大きな影響をおよぼします。

一方で眼は右眼と左眼の二つあるため、健康な眼が病気の眼の見え方を補うことで異変に気がつかないことや、病気の初期は眼の疲れや違和感といった軽い症状の場合があり、様子を見ているうちに病気が進行してしまうことがあります。
このため、日頃から片眼をふさいで右眼と左眼のそれぞれの眼の見え方をご自身でチェックすることが重要になります。

加齢黄斑変性_見え方



K-style vol.63 2020夏号より
K-style63

執筆者

医長(講師) 鎌尾 浩行 Hiroyuki Kamao
専門分野 黄斑疾患、再生医療

認定医・専門医・指導医 日本眼科学会眼科専門医、PDT(眼科光線力学的療法)認定医

出身大学
川崎医科大学 H14.3 卒業

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