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貧血の治療・注意点について

血液がんのひとつ「骨髄異形成症候群」とその前段階について

骨髄異形成症候群の症状は、貧血のみの場合もありますが、白血球や血小板が減ることや、白血病と同じ細胞(芽球)が増えて白血病手前の状態のこともあり、症状は一様ではありません。
高齢者に多く、1年間に人口10万にあたり3人程度の発症率で、当科でも月に数例程度新たに診断されます。
骨髄異形成症候群は、すべての血液のもととなる「造血幹細胞」の異常とされ、次世代シークエンスなど技術の進歩により、ある役割の遺伝子(エビゲノム制御分子:TET2、DNMT3A、EZH2など)に変異が高頻度にみられることがわかってきました。

更に、骨髄異形成症候群でみられるこれの遺伝子変異は、一見健康に見える人にも見つかることが報告され、
CHIPChronal Hematopoiesis with Indeterminate Potential /未確定の潜在能をもつクローン性造血)と呼ばれています。
CHIPは50歳未満では1%未満と少ないですが、加齢とともに増加足、65歳以上では約10%の人がCHIPの状態といわれています。
さらにCHIPでは、血液の病気だけでなく、心血管疾患のリスクが高いことも報告されています。
CHIP自体は病気ではありませんが、年齢を重ねるにつれて病気になるリスクが高くなっていく状態といえます。
今は病院の外来でCHIPを診断することはできませんが、近い将来には可能となるかもしれません。

貧血2

貧血の治療

鉄分やビタミンなど「材料不足」による貧血は、足りないものを補うことで治療します。
病院で診断・治療する場合は不足しているものだけを補いますが、ドラッグストアなどで打っている貧血のサプリメントには、鉄、ビタミンB12、葉酸がすべて含まれています。
軽い段階であればサプリメントでも効果はありますが、いずれも少ない量子化含まれていないので、治療としては十分ではありません。
「材料不足」となった原因を調べることも大切なので、貧血の症状がある場合は医療機関を受診しましょう。

貧血3

血液を作る「骨髄」にもんだが起こって貧血となっている場合は、その理由に合わせて治療が異なります。
白血病、リンパ腫、骨髄腫などの血液がんでは、抗がん剤や分子標的薬による薬物療法、再生不良性貧血など免疫により造血幹細胞が攻撃されてしまっている場合は、免疫抑制剤による治療が行われます。
それぞれ標準的な治療が決まっているので、その中から患者さんの体調や生活背景、希望も考慮して、相談の上、治療法を選択します。

貧血の患者さんは、周りの人に鉄分補給やサプリメントを勧められることが少なくないようです。
いろいろな原因がありそのほとんどは予防できませんので、症状がある場合にはきちんと診断・治療を受けることが大切です。



K-style vol.60 2019秋号より
K-style60

執筆者

部長(教授) 近藤 英生 Eisei Kondo
専門分野 血液病学、輸血・細胞治療学、造血器腫瘍、造血幹細胞移植、腫瘍免疫

認定医・専門医・指導医 日本内科学会総合内科専門医・指導医、JMECCインストラクター、日本血液学会血液専門医・指導医、日本輸血・細胞治療学会認定医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本造血細胞移植学会造血細胞移植認定医、日本救急医学会認定ICLSインストラクター、臨床遺伝専門医

出身大学
岡山大学 H7.3 卒業

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