文字サイズ

086-462-1111(代表)

がんの弱点を調べる最新医療

更新日:2026/07/10

がんの弱点を調べる最新医療 ~がんゲノム医療とリキッドバイオプシー~

遺伝子情報に基づくがん治療


 「がんゲノム医療」とは、がん細胞に起きている遺伝子の変化を調べ、治療に役立つ情報を探す医療です。従来は、がんが発生した臓器や病理診断をもとに治療を選ぶことが中心でした。現在はそれに加えて、がんの増殖を促している遺伝子変化、免疫療法が効きやすい可能性を示す指標、治療抵抗性に関わる変化などを確認し、より適した薬剤や臨床試験を検討できるようになってきました。
 中心となる検査が「がん遺伝子パネル検査」です。手術や生検で採取したがん組織を用いて、数十から数百種類の遺伝子をまとめて調べます。現在、この検査は保険適用となる条件(標準治療が終了した、あるいは終了見込みの患者さん、または原発不明がんや希少がんの患者さんなど)が定められています。結果は、主治医だけでなく、臨床腫瘍医、病理医、遺伝医学の専門家、薬剤師、看護師などが参加する専門家会議で検討されます。遺伝子変化が見つかっても、必ず対応する薬があるとは限りません。一方で、標準治療に加えて分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、治験・臨床試験などの候補が見つかることがあります。

血液で調べるがん検査


 近年注目されているのが「リキッドバイオプシー」です。血液中にごく少量流れ出したがん由来DNAを調べる検査で、体への負担が少ないことが特徴です。血液を用いたパネル検査も保険適用で行えるようになっていますが、現状では医学的な理由でがん組織を採取しにくい場合などに限られています。利用できる検査や保険適用のタイミングは、がんの種類や病状によって異なります。検査には準備が必要ですので、希望される場合は現在の主治医と情報共有しながら進めます。
 現在、日々の診療で保険適用として実施できる検査にはまだ制限がありますが、当院では大学病院として「がん治療の未来」を見据えた研究にも鋭意取り組んでいます。例えば、血液検査を活用してがんの性質の変化(進化)をいち早く捉え、薬が効かなくなる兆候を予測して先手で治療を工夫するような、より患者さん一人ひとりに最適化された治療の実現(図2参照)を目指しています。

図2)がんの変化を確認しながら治療を見直す
がんの弱点を調べる最新医療 図2
がん細胞の性質は、治療中に変化することが知られています。この図では、遺伝子検査やリキッドバイオプシーなどでがんの特徴を確認し、画像検査や診察の情報と合わせて、治療薬やケアの見直しにつなげる「未来のがん治療」を示しています。

当院の取り組みと治療への支援


 当院では、がんゲノム医療連携病院として、患者さんに検査の目的、利点、そして現在の限界についても丁寧に説明し、検査結果を治療方針に結びつける支援を行っています。遺伝子検査の結果は、患者さんご本人だけでなくご家族に関わる情報を含む場合があるため、必要に応じて遺伝カウンセリングにもつなげます。最新医療は「必ず効く特別な治療」ではありませんが、標準治療を大切にしながら、次の選択肢を探すための重要な手がかりになります。

K-Style Vol.84 チェックリスト

関連ページ:最新のがん治療

執筆者

部長(教授) 永坂 岳司 Takeshi Nagasaka
専門分野 消化器がん、原発不明がん、遺伝性腫瘍、がん遺伝子診断

認定医・専門医・指導医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、日本外科学会外科専門医・指導医、日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医・指導医、日本内視鏡外科学会技術認定医

出身大学
岡山大学 H7.3卒

メディカル
インフォメーション 検索

診療科・部門で探す