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強迫症の背景・治療について

更新日:2023/10/10

強迫症の背景・治療について

強迫行為の背景にあるもの


 強迫行為の背景にあるのは、損害の回避かしっくりこない感覚です。たとえば、外出時、玄関の鍵をかけわすれて泥棒に入られて大事なものが盗られたらどうしよう、あるいは家族が危険なめにあったらどうしようと不安になって何度も玄関のドアノブや鍵をガチャガチャするのなら、損害の回避が背景にあります。
 患者さんによっては、そのような不安は存在せず、しっくりこない感覚があるため、あるいは完全に鍵がかかった感覚がないため、何度もドアノブや鍵をガチャガチャする場合もあります。もちろん、背景に、損害の回避としっくりこない感覚の両方がある強迫行為もあります。一般的に、背景にしっくりこない感覚がある強迫行為のほうが難治で、後に述べるような行動療法の効果も乏しいことが多いです。

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強迫症の治療


 強迫症は自然に良くなることはあまり期待できない疾患です。治療をするうえで一番大事なことは、強迫観念や強迫行為がどのような仕組みで維持し増悪しているのかを理解することです。通常は、強迫行為をすることによって一時的に不安が軽減するため、つい強迫行為をしてしまい、このことによって、強迫観念や強迫行為が維持し増悪していきます。
 強迫症の治療としては、まず薬による治療があります。薬による治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を内服します。強迫症の場合、SSRIは高用量、長期間内服する必要があります。そして、SSRIによって効果を認めない場合、患者さんによっては増強療法といって、SSRIに非定型抗精神病薬を追加して内服してもらうことによって効果を認める場合もあります。
 薬による治療に上乗せする治療法としては、行動療法があります。強迫観念のために避けていることを敢えて行い、強迫観念から生じる不安や不快感を一時的に軽減するためにしている強迫行為を敢えて行わないというのが強迫症に対する標準的な行動療法です。行動療法は、治療法のことや自分の強迫観念と強迫行為がどのような仕組みで維持増悪しているのかを患者さんが十分理解したうえで行います。一言で言えば、嫌なことをする治療になりますので、患者さん自身がこの治療法をすることを望まなければ、行うことはできません。主治医が効果を期待できると判断し、患者さんが行う意欲と意思がある場合、当科では行動療法を行うことがあります(すべての強迫症の患者さんに行動療法を行うわけではありません)。なお、当科では強迫症に対して認知行動療法は原則行っておりませんので、ご注意ください。

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執筆者

医長(講師) 宮﨑 哲治 Tetsuji Miyazaki
専門分野 臨床精神医学

認定医・専門医・指導医 精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医、日本総合病院精神医学会一般病院連携精神医学専門医・指導医、日本医師会認定産業医

出身大学
香川大学 H12.3 卒業

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