がんゲノム医療センター
更新:2025年4月1日
二次的所見への対応について
川崎医科大学附属病院
がん遺伝子パネル検査時における
二次的所見への対応に関する標準手順書(改訂版 2025)
1. 手順書作成の目的
がん遺伝子パネル検査(以下、「がんパネル検査」)は腫瘍体細胞の病的変異(バリアント)を検出し、がん治療方針選択の一助とすることを第一の目的とする。しかし、同時に生殖細胞系列の病的変異が二次的に同定される場合がある。
この「二次的所見」は、がん患者本人の治療のみならず、血縁者の健康管理・発症予防に有益な情報となり得る。そこで当院遺伝診療部は、がんパネル検査における二次的所見の対応に関する標準手順を改訂し、現時点での最新の国際ガイドラインおよび国内指針を反映した。
2. 二次的所見の定義
本手順書では、がんの診断・治療・予後予測を目的として行われる腫瘍体細胞変異解析 (一次的所見)に対し、本来の目的ではないものの、解析の結果として同定された生殖細胞系列の病的変異、またはその可能性を示唆する変異を「二次的所見」と定義する。
3. 病的変異の定義
病的変異とは、日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」および国際データベース(ClinVar 等)においてpathogenic または likely pathogenic と判定される臨床的意義が確立された病的変異を指す。
有益性が明らかでない変異(VUS など)は原則として対象外とする。最終判断は、依頼元のがんゲノム医療中核病院の報告を参考に、当院遺伝診療センター内でがん遺伝子パネル検査会議(臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラー等を含む)を行い決定する。
4. 開示対象とする二次的所見
開示対象は以下を満たすものとする:
1. 治療・予防法が存在し、本人・家族の健康管理に有益な所見であること。
2. ClinVar 等の公的データベースにおいて病的変異として評価されていること。
参考基準:
- ACMG Secondary Findings v3.0(2021) – 73 遺伝子を推奨
- NCCN Guidelines(2025 版) – 遺伝性腫瘍症候群関連の推奨遺伝子を反映
- 日本医学会連合(2022 提言) – 国内でのC-CAT 運用と連動
対象遺伝子は「別紙」にリスト化する。
5. 二次的所見開示のプロセスと留意点
- 検査前説明で二次的所見の可能性を伝え、本人および家族に開示希望を確認する。
- 結果返却時、がん治療経過や家族歴を踏まえ、開示の時期は一次的所見と同時でなくてもよい。
- 患者死亡後であっても、家族の健康管理に資する場合は、同意書に記載された連絡先を通じて開示を検討する。
- 開示にあたっては遺伝カウンセリングを行い、必要に応じて関連診療科や他施設専門家を含めて協議する。
なお、本人の意思や心理的負担等を考慮し、開示が不適切と判断される場合には、パネル検査会議において開示を行わない判断をすることがある。
6. 二次的所見がない場合
事前に開示希望があり、開示対象の所見がなかった場合は、その旨を一次的所見の結果説明時に担当医から伝える。
7. 開示に関する費用
遺伝カウンセリングは原則として自由診療とする。ただし今後、保険適用範囲の拡大が検討されているため、本手順書は、制度改定等に応じて適宜見直すものとする。
8. 参考文献
- Kalia SS, et al. Recommendations for reporting of secondary findings in clinical exome
and genome sequencing, 2021 update (ACMG SF v3.0). Genet Med. 2022. - NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Genetic/Familial High-Risk Assessment
(Breast, Ovarian, Pancreatic, Colorectal). Version 2025. - 日本医学会連合・日本人類遺伝学会: 二次的所見の取り扱いに関する提言(2022 年改訂)
- 厚生労働省がんゲノム医療推進コンソーシアム/C-CAT 運用指針(最新版)
【別紙】開示を考慮する遺伝子リスト
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