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がんセンター

がん治療

“がん”の治療内容などについて、分かりやすくQ&Aで解説します。

胃がん

Q1胃がんにはどんな種類のがんがあるのでしょうか?

A1
胃がんの組織型は大部分が腺がんです。この腺がんの中には分化型と未分化型があり性質が若干異なります。分化型は管状腺がんなど、未分化型は印環細胞がんがその代表で、未分化型のがんは悪性度が高い(進行しやすい)といわれています。

Q2胃がんにかかるとどんな症状がでるのでしょうか?

A2
早期ではほとんどの場合症状を認めません。人によっては、たまたま潰瘍があるなどで早期から症状が出る場合もありますが、多くの場合自覚症状が出現するのは進行してからです。進行がんであってもまったく症状の無い場合もあります。がんが進行するとがん組織がくずれた部分からの出血があったり、がんが胃の内腔を占居し、通過障害(食べれない、食べると吐いてしまう)が生じたりします。この場合、がんはすでにリンパ節や腹膜に広がっている可能性が高くなります。

Q3胃がんにはどんな治療がありますか?

A3
がんの進行度により変わります。詳しくは、日本胃癌学会の編集した胃がん治療ガイドライン(第5版、20181月改定:金原出版株式会社1300円)に記載されています。
  1. ごく早期(粘膜内に留まる)のがんは内視鏡で切除することが可能です。現在は少し粘膜下層に浸潤した一部のがんも内視鏡での切除が検討されています。また、早期胃がんで内視鏡的切除の適応外病変に関しましては、当院では、腹腔鏡下胃切除術を積極的におこなっています。傷口が小さく非侵襲的な治療方法と考えられ、その安全性が臨床試験により検証されています。
  2. 進行がんでは基本的に手術(胃切除)とリンパ節郭清(リンパ節を胃と一緒に一塊に切除する)が推奨されます。摘出した組織を病理学的検査(顕微鏡でがんの型、進行の深さ、リンパ節転移の検査)を行った後に、再発防止のために補助化学療法(胃切除の後に行う抗がん薬治療)を行う場合があります。
  3. がんが進行して切除が不能、あるいは切除してもがんが取り切れない場合は化学療法を行います。婦人科系腫瘍(例えば卵巣がんなど)では、減量手術(可能な限りの病巣切除)を行い術後に化学療法を行うことが標準ですが、胃がんでは減量手術の意義が否定されています。
    また、幽門部(胃の出口)にがんができて、通過障害を起こしているような患者さんには、開腹下でバイパス手術を行い経口摂取を開始した後に抗がん剤治療を行っています。

Q4胃切除にはどのような方法がありますか?

A4

胃切除の基本は、幽門側胃切除術(胃の出口側2/3切除)です。がんの占拠部位が胃上部(入口近く)にある症例には胃全摘術が適応となります。また、噴門部(胃の上部)にとどまるような早期がんに対しては噴門側胃切除術の適応となります。

当院では、腹腔鏡の手術は、現在、ステージIの胃がんに対して行っています。進行胃がんに対する腹腔鏡下手術は、中国および韓国からの報告では、開腹手術と遜色のないとする結果が報告されていますが、本邦ではその臨床試験の結果が出ていません。当院では、倫理審査を終了し、希望される患者さんに対しては十分な同意のもとに、進行胃がんに対しても腹腔鏡下胃切除術を施行しています

Q5胃切除を行った後の生活はどうなりますか?

A5
胃切除後には物が食べられるのだろうか、流動食しか食べられないのでは?と疑問に思われる方が意外に多くおられます。また、日常生活はもとより、仕事もできなくなるのではと不安になる方もおられます。

確かに、胃がなくなったり小さくなったりすると、すぐには手術前と同じように食べることができません。胃を切除しますと貯留する(食べたものを貯める)機能が著しく低下します。 つまり食物がいきなり小腸に入ります。このためダンピング症状(食後に腹痛、気分不良、紅潮感を感じる早期症状と、食後2時間程度経って動悸やめまいといった低血糖症状を感じる症状)や腹満感、下痢などが生じることがあります。そのため、1日の必要な摂取量を3回ではなく5-6回に分けて食べていただき、さらに1回の食事に時間をかけてよく噛んで食べるということが必要となります。しかし、時間の経過によって(半年から1年をかけて)だんだんと落ち着いてくるのが普通です。

40~50代の働き盛りの方も多くいらっしゃいます。皆さまが仕事をしなくては家族を養えません。そうした方々も多くは早期に職場に復帰され、元気に仕事を継続しておられます。若い方ほど慣れるのが早いように思います。

皆さんの回りにも胃切除を行った方がおられるかもしれませんが、普通の生活をなさっておられる方が多くはないでしょうか。

Q6手術を受けた場合の入院期間はどれくらいでしょうか?

A6
クリニカルパス(治療計画)に沿って治療を進めます。現在、幽門側胃切除術では2週間、胃全摘術では3週間で退院するクリニカルパスを用いています。機能温存・低侵襲術式も行う場合は少し短くなります。また進行がんの場合、化学療法を引き続き行う場合があります。

Q7化学療法とはどのようなものでしょうか?

A7
切除術後に行う補助化学療法と切除ができない場合や転移・再発をきたした場合に行う化学療法の2つです。

胃切除後の切除標本で病理組織学的な検索が行われ、ステージII/IIIと判定された患者さんには、術後早い時期よりTS-1という抗がん剤を1年間、内服していただきます。TS-1の内服により患者さんの生存率が向上することが臨床試験により証明されています(ACTS-GC試験)。
また、ステージIIIに関しては、近年の臨床試験の結果によりTS-1に加えてドセタキセルという抗がん剤を上乗せすることにより生存率が向上したという報告があり、胃癌治療ガイドラインに追加記載されました。当院でもその結果に基づきステージIII患者さんには、術後にTS-1/ドセタキセル治療を推奨しています。

切除不能、再発胃がんに対する抗がん剤治療ですが、胃癌治療ガイドラインのp27に記載されています。注目すべき点は、三次化学療法として、免疫Checkpoint阻害薬のニボルマブが保険適応となったことです。近年、遺伝子異常を有する(MSIの異常、胃がんの7~8%)胃がんをターゲットとした免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ®」も保険適応となりました。さらに、抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ配合錠」も保険適応となりました。使用できる薬剤の種類が増える分、治療の選択肢も増えますが、相乗効果を狙った使用薬剤の組み合わせの臨床研究も進んでいます。

現在、切除不能、再発胃がんの治療は、臨床腫瘍科と共同で行っています。定期的なカンファレンスを行い適切な治療方法を提唱いたします。

臨床試験にも積極的に参加し、新たなる治療方法について提唱させていただいています。

Q8胃がんに対する治療(手術)はどのような方針で行っていますか?

A8
われわれは、患者さんに“早く元気になり、長く元気でいてもらいたい”と願いをこめて手術を行っております。そのためには患者さんの年齢、心臓・肺・肝臓・腎臓など各臓器の状態、糖尿病など他の疾患との合併などを十分吟味し、どの手術法がふさわしいかを検討いたします。また、化学療法もできるだけQOL(生活の質)を保ち、なおかつ効果を期待できる治療法を、それぞれの方の状態・状況に応じてできるよう心がけています。

最新の医療を用意すると同時に患者さんやご家族さまとよくお話をして納得のいく治療ができるように努力をしています。