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がんセンター

がん治療

“がん”の治療内容などについて、分かりやすくQ&Aで解説します。

食道がん

Q1食道がんにはどんな種類のがんがあるのでしょうか?

A1
胃がんの組織型は大部分が腺がんです。この腺がんの中には分化型と未分化型があり性質が若干異なります。分化型は管状腺がんなど、未分化型は印環細胞がんがその代表で、未分化型のがんは悪性度が高い(進行しやすい)といわれています。

Q2食道がんにかかるとどんな症状がでるのでしょうか?

A2
早期では症状を認めない場合も多くあります。たまたま胃の内視鏡検査の際に見つかる場合もありますが、明らかな自覚症状が出現するのは進行してからです。進行がんであってもまったく症状の無い場合もあります。がんが進行するとがんが食道の内腔を占居し、通過障害(食物がつかえる、食べると吐いてしまう)が生じます。この場合、がんはすでにリンパ節やその他の臓器に広がっている可能性が高くなります。

Q3食道がんにはどんな治療がありますか?

A3
がんの進行度により異なります。詳しくは、日本食道学会の作成した食道がん診療ガイドライン(2017年版、金原出版株式会社、¥2800+消費税)に詳しく述べられています。
  1. ごく早期(粘膜内にとどまる)のがんは、内視鏡で切除することが可能です。
  2. 進行がんでは、基本的に食道切除とリンパ節郭清(リンパ節を食道と一緒に切除する)が標準治療となっています。しかしながら、手術のみで生存率を向上させるには限界があり、近年は術前に抗がん剤、放射線を使用し、がんを縮小させてから手術を行う場合があります。特にステージ2/3の場合、術前抗がん剤治療(5-FUとシスプラチン)を8週間程度行って外科的手術を行うことが推奨されています。また、5-FU、シスプラチン、ドセタキセルの3剤を使用するDCF療法も症例に応じて行っています。
    現在、術後に再発を予防するために抗がん剤、放射線治療を行うことはあまり推奨されていません。一方、術後再発食道がんに対して免疫チエックポイント阻害薬の有効性が最近の臨床試験で認められ、2020年2月に保険適応となりましたので、当院でも行っています。
    また当院はJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)にオブザーバー参加し、臨床試験にも積極的に参加しています
  3. がんが進行して、切除不能の場合は抗がん剤(5-FU、シスプラチンが主流)、放射線との併用療法を行い、根治手術が可能と判断されたら外科的手術を行います。ただ、根治手術が望めないときは、無理に手術をおこなわずに人工食道の挿入、ほかの抗がん剤(セカンドラインといいます)を使用し延命効果を高める方法をとります。

Q4食道切除術にはどのような方法がありますか?

A4
胃切除の基本は、幽門側胃切除術(胃の出口側2/3切除)です。がんの占拠部位が胃上部(入口近く)にある症例には胃全摘術が適応となります。また、噴門部(胃の上部)にとどまるような早期がんに対しては噴門側胃切除術の適応となります。
当院では、腹腔鏡の手術は、現在、ステージIの胃がんに対して行っています。進行胃がんに対する腹腔鏡下手術は、中国および韓国からの報告では、開腹手術と遜色のないとする結果が報告されていますが、本邦ではその臨床試験の結果が出ていません。当院では、倫理審査を終了し、希望される患者さんに対しては十分な同意のもとに、進行胃がんに対しても腹腔鏡下胃切除術を施行しています。

Q5食道切除術を行った後の生活はどうなりますか?

A5
食道切除後には物が食べられるのだろうか、流動食しか食べられないのでは?と疑問に思われる方が意外に多くおられます。また、日常生活はもとより、仕事もできなくなるのではと不安になる方もおられます。

確かに、食道を切除して胃を食道の代用としますので、胃の貯留する機能は著しく損なわれます。胃を切除した場合と同様に1日の必要な摂取量を3回ではなく5~6回に分けて食べていただき、さらに1回の食事に時間をかけてよく噛んで食べるということが必要となります。 また、ときどき食道と胃の吻合部に狭窄をきたして、食べたものがつかえるといった症状が出ることもあります。この場合、内視鏡的に狭窄部を拡張することで症状が改善されます。ただ、改善するまでに数回の拡張術を要することがあります。持ち上げた胃は単なる筒となるため食物を下へ送り出す機能も損なわれます。持ち上げて胃が無くなるとか小さくなると、すぐには手術前と同じように食べることができません。時間の経過によって(半年から1年をかけて)だんだんと落ち着いてくるのが普通です。

Q6手術を受けた場合の入院期間はどれくらいでしょうか?

A6
食道がんの手術は、生体に対する侵襲が大きく、術前に十分な検査をする必要があります。
約10日間の検査入院をお願いすることがあります。周術期管理チームのメンバーが外来受診時より介入し、手術入院は、約1週間前に入院していただきます。栄養状態の悪い患者さんは、2週間程度前に入院していただき、NST(栄養サポートチーム)の担当管理栄養士が介入し術前の栄養状態に改善を行います。術後は、クリニカルパス(治療計画)に沿って治療を進めます。現在のところ、食道亜全摘術で約3~4週間の入院が必要となっています。

Q4化学放射線療法とはどのようなものでしょう。

A7
化学放射線療法は、化学療法と放射線治療を同時に行う治療法です。

食道がんは、放射線感受性の高いがんとされています。現在、臨床試験等により根治的治療では、放射線単独よりも同時併用化学放射線療法の効果が高いことが証明されています。放射線治療の適応となるのは、病変が局所あるいは領域リンパ節にとどまる症例で遠隔転移のある症例には適応がありません。手術不能の進行食道がんに対する治療の選択肢の1つですが、手術に適さないか手術を希望しない症例にも適応があります。また、早期がんで内視鏡的切除後のがん遺残症例、あるいはリンパ節転移の可能性がある場合にも適応があります。本邦では、5-FU、シスプラチンという抗がん剤を併用する方法が一般的です。残念ながら、抗がん剤、放射線治療の副作用もあり、入院治療していただくことが原則となっています。また、化学放射線療法が奏功し、その後に手術が検討される場合があります。

Q8食道がんに対する治療(手術)はどのような方針で行っていますか?

A8
われわれは、患者さんに“早く元気になり、長く元気でいてもらいたい”と願いをこめて手術を行っております。そのためには患者さんの年齢、心臓・肺・肝臓・腎臓など各臓器の状態、糖尿病など他の疾患との合併などを十分吟味し、どの手術法がふさわしいかを検討いたします。また、化学放射線療法もできるだけQOL(生活の質)を保ち、なおかつ効果を期待できる治療法を、それぞれの方の状態・状況に応じてできるよう心がけています。

最新の医療を用意すると同時に患者さんやご家族さまとよくお話をして納得のいく治療ができるように努力をしています。