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がんセンター

がん治療

“がん”の治療内容などについて、分かりやすくQ&Aで解説します。

肺がん

Q1肺がんにもさまざまな種類があるのでしょうか?

A1
  • 肺がんのがん細胞には10種類以上がありますが、なかでも多いのは腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4種類です。最も多いのは腺がんで、次いで扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がんの順です。扁平上皮がん、小細胞がんは喫煙が原因と考えられていますが、腺がんは非喫煙者にも発生します。
また、がんのできる場所によっても、肺野型(末梢型)と肺門型(中枢型)に大きく分けられます。肺野型とは肺の端のほうにできるがんで腺がん、大細胞がんが多く、肺門型は比較的太い気管支にできるがんで扁平上皮がん、小細胞がんが多く見られます。

Q2肺がんには、どんな治療法がありますか?

A2
肺がんの治療法には大きく分けて、
  1. 手術療法
  2. 放射線療法
  3. 薬物療法(抗がん薬、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬)

があります。肺がんの種類や病期(進行度)によって、どの治療が良いか、あるいはどの治療を組み合わせるか、を決めます。

Q3病期(進行度)はどうやって決めるのですか?

A3
  • がんの大きさや周囲臓器への広がり(「浸潤」といいます)、リンパ節への転移や他の内臓への転移があるかどうかで病期が決まります。 病期を診断するために、胸腹部造影CT、PET-CT、脳MRIなどの検査を行います。

IA期(IA1期、IA2期、IA3期)

がんの大きさが「3cm以下」で「リンパ節や他の内臓に転移のない」状態。

IB期

がんの大きさが「3.1~4cm」で「リンパ節や他の内臓に転移のない」状態。

II期

がんの大きさが「4.1~7cm」で「リンパ節や他の内臓に転移のない」状態、または、がんの大きさが「5cm以下」で「肺門(肺の付け根)のリンパ節に転移のある」状態。

IIIA期

がんの大きさが「7cmを超える」または「胸椎、大血管、食道などに浸潤がある」状態で、かつ「リンパ節や他の内臓に転移のない」状態。

または、がんの大きさが「5cmを超える」、かつ「肺門(肺の付け根)のリンパ節に転移のある」状態。

または、がんの大きさが「5cm以下」で「縦隔(気管の周り)のリンパ節に転移のある」状態。

IIIB期

がんの大きさが「5cmを超える」または「胸椎、大血管、食道などに浸潤がある」状態で、かつ「縦隔(気管の周り)のリンパ節に転移のある」状態。

または、がんの大きさが「5cm以下」で、かつ「鎖骨の上や反対側のリンパ節に転移のある」状態。

IIIC期

がんの大きさが「5cmを超える」または「胸椎、大血管、食道などに浸潤がある」状態で、かつ「鎖骨の上や反対側のリンパ節に転移のある」状態。

IV期

脳、骨、肝臓その他の内臓に転移のある状態。

Q4腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんの治療はどうやって行いますか?

A4
これらのがんに対して行われる一般的な治療法は以下のとおりです。

IA期

手術をお勧めします。
また、がんの大きさが「2cmを超えて」いた場合には、手術により完全に取り除いた後に抗がん薬治療をするようお勧めします。

IB期とII期

手術をお勧めします。
また、手術により完全に取り除いた後に抗がん薬治療をするようお勧めします。

III期

病状や全身状態を考慮して治療法を選択します。

手術ができる(手術による完全に取り除くことができる)状態であっても、手術の前に薬物療法(または抗がん薬治療と放射線治療の併用療法)を行ってがんを小さくした後に手術を行います。また、手術により完全に取り除いた後にも薬物療法をお勧めすることがあります。

手術ができない(手術による完全に取り除くことができない)状態では、抗がん薬治療と放射線治療を組み合わせた治療を行います。 分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療を行うこともあります。

IV期

薬物療法が主体となります。

骨や脳などへの転移により症状がある場合には、放射線治療を行うこともあります。

Q5小細胞肺がんはどうやって治療しますか?

A5
    • 小細胞肺がんは胸の中にとどまっている状態の「限局型」と胸の外にまで転移が広がっている「進展型」で治療方法が異なります。

「限局型」は抗がん薬治療と放射線治療を組み合わせた治療を行います。

「進展型」では薬物療法(抗がん薬治療や、免疫チェックポイント阻害薬)を行います。

 

Q6肺がんの手術はどのようなことをするのですか?

A6
    • 肺は、右は上・中・外の3つの肺葉から、左は上・下の2つの肺葉からできています。肺がんの手術では、これら5つの肺葉のうちがんのできている肺葉をまるごと1個切除します。(「肺葉切除」といいます)。また、周囲のリンパ節を一緒に摘出します(「リンパ節郭清」といいます)。

    以前は、側胸部(わきの下のあたり)を15~20cm切開して手術を行っていましたが、近年では胸腔鏡(きょうくうきょう)というカメラを胸の中に入れて小さな傷で行う「胸腔鏡手術」が一般的です。

    ご高齢の方や肺活量が少ない方では、肺葉を切除するのではなく、がんの部分だけを切除する場合も(「区域切除」や「部分切除」など)もあります。

Q7手術をした後も日常の生活はできますか?

A7
  • 手術を受ける人のもともとの肺機能によって違いますが、一般にひとつの肺葉を切除すると肺活量は約20%減少します。もともと正常な肺活量を持っている人であれば、手術後も日常生活に大きく支障きたすことはまずありません。
一つの肺葉を切除した後の日常生活に支障をきたすことが予想される場合には、より小さく肺を切除する手術(「区域切除」や「部分切除」など)を行います。

Q8抗がん薬治療とはどんな治療ですか?

A8
抗がん薬(抗悪性腫瘍薬)を用いた治療法です。抗がん薬の多くは注射(点滴)薬で、注射した薬剤が血液の中に入り、血流に乗って全身をめぐり、全身に広がった(広がっていると考えられる)がん細胞の増殖を抑えることにより効果を発揮します。抗がん薬には10数種類ありますが、どの薬を使うかは、肺がんの種類(非小細胞がん・小細胞がん)、進行度、患者さんの年齢や全身状態を考慮して決めます。注射で行う抗がん薬治療は、3~4週間を1コースとして、これを4~6コース行うのが一般的です。

Q9抗がん薬治療は苦しいと聞きましたが?

A9
  • 抗がん薬はがん細胞だけではなく正常細胞にも作用するため、副作用が生じます。副作用の種類は、用いる抗がん薬の種類によって異なり、またその程度も個人差があります。一般的によく見られる副作用には、悪心嘔吐、下痢、腎機能障害、白血球減少などがあります。 副作用が予想される場合には、副作用を予防する薬などを併用しながら治療を行います。また症状が出た場合には、症状を抑える治療をしながら回復を待ちます。重篤な副作用が出た場合は、抗がん薬の量を減らしたり、ほかの抗がん薬に変更したりする場合もあります。
抗がん薬の副作用は多種多様で個人差も大きいですので、あらかじめ担当医師、看護師から十分な説明を聞いてください。

Q10抗がん薬治療は入院が必要ですか?

A10
  • 注射・点滴でする抗がん薬治療は、これまでは大半が入院で行われてきました。しかし、最近では比較的副作用の少ない抗がん薬の開発や、副作用に対する治療法が進歩したことで、外来通院で抗がん薬治療を安全かつ効果的に行うことができるようになりました。

外来通院での治療は、「通院治療センター」で行います。

Q11分子標的治療とはどのような治療ですか?

A11
  • がんの増殖・進展には様々な因子が関わっていますが、これらの因子を標的にして、それらの働きを抑えることによってがんを治療をする方法です。従来の抗がん薬と比較して、正常細胞への副作用が少ないことが期待されています。一方で、分子標的治療に特有な副作用もあり、それらに十分注意して治療を行う必要があります。
    がんの増殖に関わる異常な遺伝子(EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF遺伝子変異、MET遺伝子変異、RET融合遺伝子変異など)がある場合にのみ高い効果が期待されます。さまざまな分子標的薬剤が開発されつつありますので、自分が分子標的治療に適しているかどうかを知るためには、がん治療を専門とした病院を受診して、専門医にご相談ください。

Q12免疫チェックポイント阻害薬とはどのような薬ですか?

A12
  • 私たちの体にはがん細胞を異物として排除する働きがあります(「免疫機能」といいます)。がん細胞は、その免疫機能にブレーキをかけて排除されないようにして増殖・進行します。免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞に対する免疫を調整して治療効果を発揮する新しいタイプの治療薬です。
免疫チェックポイント阻害剤の治療では、間質性肺炎、甲状腺(こうじょうせん)機能異常、劇症I型糖尿病、自己免疫性腸炎、重症筋無力症などの重篤な副作用が一部の患者さんでみられることが知られています。そのため、十分な知識・経験を有する医師・医療スタッフが揃った専門医療機関で、適切な治療を受けることが大切です。

Q13放射線治療とはどんな治療ですか?

A13
    • がんやその周辺部分に放射線をあてて行う治療法です。がんがない、消えた場合にも予防的に放射線をあてることがあります。手術ができないと判断された場合でも放射線治療でがんを治すことを目指すことができ、痛みや出血などを減らす目的でも行います。

    治す目的の場合は、平日に1115-60分、週5回に治療を行い合計30(6-7)で、早期肺がんに対する定位放射線治療では、114-10(1-2)のスケジュールで行います。痛みを減らす治療の場合は、1-10(1-2)のスケジュールで行います。

    近年の放射線治療機器では、可能な限りがん組織に放射線を集中させることによって以前の機器よりも効果を高め、副作用を低減することが可能となっています。当院では20226月にトモセラピー(最上位機種のRadixact)が稼働し、中国地方の大学病院では初めての導入です。定位放射線治療、強度変調放射線治療、画像誘導放射線治療を高いレベルで提供しており、この機器による追尾照射を中国四国地方で初めて開始しました。脳転移や骨転移に対する定位放射線治療、少数転移に対する高度な放射線治療も可能です。病状等により放射線の詳細は異なりますので、担当医師、看護師から十分な説明をお聞きください。

Q14放射線治療に伴う副作用にはどんなものがありますか?

A14
胸部に放射線をあてる場合は、食欲低下、血球減少、皮膚炎、食道炎や潰瘍、気管や気管支の炎症や潰瘍、骨折、放射線肺炎や感染による肺炎、呼吸機能低下、心膜炎や心筋炎、二次がんなどがあげられます。回復するものからしないものまであります。放射線があたっていない部位には、多くは副作用はでませんし、外照射の場合は患者さんの周囲の方に放射線の影響はありません。副作用の種類と程度は、放射線治療を行う範囲、線量、部位によって、また患者さんの年齢やお持ちの病気によっても様々です。担当医師、看護師から十分な説明をお聞きください。