53ドクターヘリ運航20周年記念誌ドクターヘリ運航20周年記念誌川崎医科大学附属病院顧問(前附属病院長)(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター長 2013.4〜2018.9,2020.4〜2020.11)ドクターヘリが飛び立ち、大空のかなたに徐々に消えていく姿をみると私はいつも涙が出そうな感動を覚えます。プロペラ音を轟かせ去っていく姿に思わず、「頼むぞ」と声をかけたくなります。搭乗者は、救急科のドクターと救命救急センターのフライトナース、パイロット、整備士ですが、昨年来の新型コロナ対応のため、ドクターとフライトナースは防護服・N95マスクを着用し、到着前後には機体の消毒などにも気を遣っています。2001年4月、学園創設者の川﨑祐宣先生の熱い思いを乗せて、我が国初のドクターヘリの運航が始まりました。今年で20周年を迎えましたが、この間、実に8,000回を超えるフライト(年間約400回)を行い、遠隔地の重症の救急患者の搬送と救命活動を行ってきました。この道をつけられたのが、救急科の初代部長の小濱啓次先生であり、鈴木幸一郎、荻野隆光、椎野泰和の各部長に引き継がれて今日に至っています。思い起こせば、川崎医科大学に我が国初の救急医学教室が誕生し、25年前に附属病院は高度医療を提供する特定機能病院の認可を受けました。同時に国・県・大学が一体となった県下で初めての高度救命救急センターの認可を受け、その中でドクターヘリが運用されています。この20年間、当院が中心となって、①ドクターヘリ講習会、②ドクターヘリ活動検証会、③ドクターヘリ運航調整委員会(県・県医師会・県病院協会・消防・警察・ヘリ会社担当者・ヘリ担当医療者などの代表で構成)をそれぞれ年2回開催し、関係者の協力のもとに安全かつ円滑な運営を続けてきました。ドクターヘリの迅速な搬送と病院前治療により、通常の救急車による搬送と比較して、約30%の救命率の向上がみられます。この重要な救命活動は、当院の救急科の医師、フライトナースが中心となり、高度救命救急センターの医師・看護師などの医療者が担ってきましたが、これまで無事故でこられたのはドクターヘリのパイロット、整備士や警備員の皆様のお力添えの賜物です。この場をお借りして、関係の方々のご苦労に対し、感謝と敬意を表したいと思います。また、本年度、長年の念願であったドクターヘリの格納庫が竣工しました。夜間は機体が格納庫に入るので、極寒冬季の機体の凍結が防げ、ドクターヘリの整備も楽になり、機体の劣化も防ぐことができ、より円滑な救命救急活動が期待できます。最後に、当院のドクターヘリは前庭の一角に駐機されており、間近でその姿を見ることができますが、我々医療者や一般住民の救命救急活動への祈りや安心の象徴となっていることを付記いたします。末筆ながら、これまでの20年間、ドクターヘリ活動に尽力された皆様に心より感謝いたしますとともにドクターヘリ活動の今後益々の発展と一人でも多くの患者さんが救われることを祈念してご挨拶とさせて頂きます。園尾 博司ドクターヘリ運航20周年に寄せて
元のページ ../index.html#55