52ドクターヘリ運航20周年記念誌川崎医療福祉大学客員教授(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター長 2004.4〜2013.3)2001年4月1日岡山県において我が国最初のドクターヘリ運航が開始され、はやくも20年が経過しました。その間、大きな事故もなく今日を迎えましたことは、川崎医科大学附属病院救急科・高度救命救急センターにおいてドクターヘリ運航に関係しました一員として大変嬉しく思っています。現在は川崎医療福祉大学において医療福祉人を目指す学生達に救命救急医学を教えていますが、日本の救急医療体制を解説する際には必ず岡山県ドクターヘリの話しをしています。大学敷地内の総合体育館前にヘリポートが設置されているため学生達にとっても身近な存在ではありますが、ドクターヘリの具体的仕事については意外に知られていません。”救命の連鎖”という言葉は心肺停止状態の人の社会復帰に向けた一つでも欠けてはいけない4つのポイントを示したものとしてよく使われますが、ドクターヘリも発生現場から決定的治療を行う医療機関(例えば救命救急センターなど)の間を繋ぐ一つのピースとしてなくてはならないものであることを医学的に説明すると学生達も大いに納得して頷いてくれます。そしてここでは地図上の距離が問題になるのではなく、急を要するという時間軸が大切なのだということを理解してくれます。ドクターヘリが重症救急患者の診療に有用であることは理解してくれても、それだけでは十分ではありません。安全運航ということが極めて重要です。米国におけるヘリコプター救急の死亡事故率(死亡事故件数/10万飛行時間)は1980~2000年当時で年間1~2件(HEM-Net調査報告書「米国ヘリコプター救急の現況と日本のあり方」2003.11.18より)であったそうです。日本でもドクターヘリ導入にあたっては、パイロットの目視による有視界飛行方式など安全対策の徹底が図られました。講義の際には、ヘリ離着陸時のダウンウオッシュによる危険性(強風、砂塵や雪煙によるパイロットの一時的空間識失調など)とその対策-特にヘリ出動要請消防機関による臨時ヘリポート周囲の安全確認と散水などの安全確保-が実施されていることを説明すると、ドクターヘリの安全運用に多くの人が関与していることに感心しております。以上医療福祉を学ぶ学生講義の一端を紹介させていただきましたが、岡山県ドクターヘリ事業での経験を学生教育の場で活用できますのも、岡山県ならびに医療・消防・警察・教育・運航スタッフなどの多くの皆様の御指導と御支援の賜物と厚く御礼申し上げます。最後になりましたが、岡山県ドクターヘリ事業のますますのご発展を祈念しております。20年を振り返って 鈴木 幸一郎岡山県ドクターヘリ運航20周年に寄せて
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