51ドクターヘリ運航20周年記念誌ドクターヘリ運航20周年記念誌く参加していただき、ドクターヘリに関する知識を深めていただきました。さらに、小中高校のグランドにドクターヘリが実際に飛んでいき、学校の生徒・教員そして地元住民にドクターヘリを見学してもらい、同時に地元消防本部の協力でグランドを臨時離着陸場に想定した活動シミュレーションを実施しました。また、各消防本部がドクターヘリを要請した事例について消防本部に行って検証・意見交換を実施しました。以上のような、岡山県にドクターヘリを根付かせるための地道な活動を、私たちはこの20年間にわたり継続してきました。また、ドクターヘリが地域の病院前救急診療システムの一部として根付くためには、ドイツのようにドクターヘリを取り巻く環境の整備が不可欠でした。それは、2000年以降に始まった救急医療体制の変化が重要であったと思います。一つは、救急救命士制度の成立と救命士の医療行為拡大です。次に、外傷診療の標準化です。これらによって、医療者が救急現場に行き、救急現場から救急隊員と医療者が協力して医療活動を行うことで救命率が向上することへの認識が高まり、ドクターカー及びドクターヘリの普及が大きく進んだと思います。そのほか影響が大きかった医療制度改革として、新研修医制度があります。卒後医師に2年間の研修が義務付けられましたが、その結果地域医療に大きな影響が出ました。それは、大学医局からの派遣医師の確保が困難になり、その結果として、地域の救急医療を担う一次二次医療機関の救急初期対応能力が低下したことです。そのために、重症救急患者の集約化すなわち医療過疎地域の医療機関から根本治療のできる都市部の高度医療機関への救急搬送が必要となり、そのために今後さらにドクターヘリが有効活用されていくことが想定されます。また、ドクターヘリが運航可能な時間帯は、高次医療機関のない地域では消防機関が直接ドクターヘリを要請することが増えてきています。このように、地域の医療システム改変に伴い、重症救急患者の集約化は今後さらに進むことが予想されます。前述のドイツでも救急患者の集約化をするために、夜間の救急ヘリ運用が進められています。日本においても、同様の対策が求められるでしょう。そのために、これからのドクターヘリは夜間運航ができる体制づくりが求められると思います。このようにドクターヘリ事業は、地域の救急医療体制の変化に伴い新たな発展への戦略が求められることでしょう。これからドクターヘリ事業を支えていただく皆さんには、そのための強い意識づけを持って活躍していただきたいと切に願います。
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