ドクターヘリ運航20周年記念誌
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50ドクターヘリ運航20周年記念誌川崎医療福祉大学健康体育学科 特任教授(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター長 2018.10〜2020.3)私は、1989年に川崎医科大学救急医学講座に入職し、以後2020年3月の定年退職まで一貫して救急分野で活動してまいりました。そして、ドクターヘリの先駆けとなる救急医療用ヘリコプターの実用化研究を1981年から本邦初で開始した小濱・藤井両教授の指導のもとで、救急医療用ヘリコプターによる病院前救急診療に関して研鑽を積む機会をいただきました。1999年には1年半に及ぶドクターヘリ試行的事業が川崎医科大学附属病院で施行されました。その際に私は現場の責任者の一人として参加しました。このドクターヘリ試行的事業の間に、ドイツで最初(1970年)に救急ヘリ事業を開始したミュンヘンに約1ヶ月出張する機会を頂いたのは、私にとって非常に貴重な経験となりました。約1ヶ月という短い期間でしたが、実際に救急ヘリに同乗して救急現場に行き、救急現場の診療にも参加することができ、まさにドイツにおける救急ヘリによる病院前救急診療がどのようなものかを目の当たりにすることができました。当時ドイツでは救急現場に救急車、ドクターカー、ドクターヘリが行き相互に補完的に活動し、場合によってはドクターカー、ドクターヘリが同時に出動することも通常の病院前救急活動として行われていました。これを見て、私は日本のドクターヘリもドイツのように病院前救急医療システムの一部として活動できることを目標とする必要があると痛感しました。そのためには、ドクターヘリ医療スタッフの教育だけでなく、救急隊員のレベルアップ、地域の救急医療体制の改善、ドクターヘリを有効活用するための航空法の整備など、改善しなければならないことが山ほどあるというのが、ドクターヘリが本格運航開始時点の状況であったのです。2001年4月に岡山県ドクターヘリの本格運航が開始されました。その時の現場責任者が私でした。全国初のドクターヘリが岡山県で開始されたということで、上記に挙げたように課題は多々ありましたが、できることからまず実施していこうということでした。医療スタッフ及び運航スタッフのレベルアップは毎月の院内定例ミーティングやドクターヘリで対応した傷病者の検証会等で行いました。そのほかでは、全国にドクターヘリを普及するための活動として、日本航空医療学会主催のドクターヘリ講習会を小濱先生はじめ全国のドクターヘリ関係者の皆さんが講師となり実施しました。私もドクターヘリ講習会には最初から講師として参加しました。この講習会がドクターヘリを全国に普及する上で非常に有効であったと思います。一方で、岡山県ドクターヘリを地域の病院前救急診療の一部として根付かせるためにいろいろな活動を工夫し実施しました。県内医療関係者への啓発活動として、岡山県版ドクターヘリ講習会を実施して、県内の医療機関のスタッフはじめ県行政機関の関係者、消防機関の関係者等に広20年を振り返って 荻野 隆光岡山県ドクターヘリの軌跡過去、現在、未来

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