更新:2025年4月1日
消化器外科|下部消化管
治療している主な病気
下部消化管
下部消化管疾患は、⼤腸・肛門・小腸を扱っています。
大腸疾患
大腸悪性疾患(結腸がんと直腸がん)
当科では、大腸がんに対して患者さん一人ひとりに最適な治療法を提供することを基本方針としています。手術療法を中心に、薬物療法や放射線療法を適切に組み合わせる集学的治療を行い、治療成績の向上を目指しています。
大腸がんの手術療法
大腸がんに対する手術は、がんを根治するための最も重要な治療法です。当科では、鏡視下手術(腹腔鏡手術やロボット支援手術)を積極的に導入し、低侵襲かつ根治性の高い手術を提供しています。特に、早期がんに対しては、鏡視下手術を第一選択とし、患者さんの負担を軽減しながら確実な治療を行います。一方で、進行がんに対しては、拡大手術や多臓器合併切除も駆使し、根治性を最大限に高める方針を採っています。
集学的治療(手術+薬物療法)
進行大腸がんや再発リスクの高い症例では、手術単独ではなく、術前・術後の薬物療法を組み合わせた集学的治療を行います。術前化学療法により腫瘍を縮小させることで、手術の安全性を向上させるとともに、術後の再発リスクを低減させています。また、転移性大腸がんに対しては、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を活用した個別化治療を行い、長期生存や治癒を目指した治療戦略を立てています。さらに、下部直腸がんには、total neoadjuvant therapy (TNT)と言う、薬物療法→放射線治療→薬物療法により、がんを消失させ肛門機能を温存できる可能性のある治療法を積極的に導入しています。また、稀ではありますが、肛門管がん(扁平上皮癌)には化学放射線療法により根治を目指しています。
当科には、がん薬物療法専門医および日本がん治療認定医機構のがん治療認定医が在籍し、高度な専門性を活かした治療を提供しています。
患者さんにとって最善の治療を提供するために、当科では手術と薬物療法を効果的に組み合わせた治療を行い、根治とQOL(生活の質)の向上を両立することを目指しています。
大腸良性疾患
当科では、大腸の良性疾患に対しても、患者さんの症状や疾患の進行度に応じた適切な治療を提供しています。良性疾患であっても、放置すると症状の悪化や将来的ながん化のリスクがある場合があり、適切な診断と治療が重要です。
大腸ポリープ・腫瘍性疾患
大腸ポリープの多くは良性ですが、一部は大腸がんの前がん病変として位置づけられています。そのため、内視鏡検査による早期発見と適切な治療が重要です。当科では、消化器内科と協力して内視鏡的ポリープ切除(ポリペクトミー・内視鏡的粘膜切除術:EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を積極的に行っていますが、大きな病変や、粘膜下層に進展した病変に対しては外科的手術を適応に応じて選択します。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
潰瘍性大腸炎やクローン病は、慢性的な炎症が持続する疾患であり、薬物療法による炎症コントロールが基本となります。しかし、重症例や薬物治療に反応しない症例では、手術が必要となることがあります。当科では、低侵襲手術(腹腔鏡手術)を積極的に導入し、患者さんの負担を軽減しながら確実な治療を提供しています。
憩室疾患(大腸憩室炎・憩室出血)
大腸憩室は、加齢や生活習慣の影響で生じることが多く、多くは無症状ですが、炎症(憩室炎)や出血を引き起こす場合があります。軽症の憩室炎は抗菌薬治療や食事療法で管理可能ですが、穿孔や膿瘍形成を伴う重症例では手術が必要になることもあります。当科では、病状に応じた適切な治療を選択し、可能な限り低侵襲な手術を行うことで、早期回復を目指しています。
便秘症・腸管運動異常(巨大結腸症・腸管神経疾患)
慢性的な便秘症や腸管運動異常により、日常生活に支障をきたす場合には、生活指導や薬物療法を中心に治療を行います。しかし、薬物治療で十分な効果が得られない難治性の症例では、外科的治療(結腸部分切除や大腸全摘)を検討することもあります。
肛門疾患
肛門疾患の治療方針
肛門疾患の多くは良性であり、まずは保存的治療(生活習慣の改善や薬物療法)を優先するのが基本方針です。しかし、症状が進行し、日常生活に支障をきたす場合には手術が必要となることがあります。
主な対象疾患と治療
直腸脱:排便時に直腸が肛門の外に脱出する疾患で、軽症例では骨盤底筋訓練や生活指導を行いますが、重症例では手術(腹腔鏡下直腸固定術など)を検討します。
痔核(いぼ痔):軽度の場合は座薬や軟膏などの保存的治療で改善が期待できますが、大きな痔核や頻繁な出血がある場合には、結紮切除術やジオン注射(ALTA療法)を行います。
痔瘻(じろう):肛門周囲膿瘍が慢性化し、肛門内外をつなぐトンネルが形成された状態です。根治には瘻管を切開または切除する手術(シートン法・括約筋温存手術など)を行います。
裂肛(切れ痔):排便時の痛みを伴う肛門の裂傷で、多くは食生活の改善や薬物療法で治療可能ですが、慢性化し肛門狭窄を伴う場合には手術を行うこともあります。