更新:2024年4月1日

消化器外科|肝胆膵

治療している主な病気

肝胆膵

肝疾患

肝良性腫瘍

代表的なものとして海綿状血管腫、肝嚢胞、腺腫様過形成、限局性結節性過形成、肝細胞腺腫、肝血管筋脂肪腫、炎症性偽腫瘍などがあります。肝良性腫瘍はほとんどが無症状で、偶然発見されることが多い疾患です。腹痛などの症状を有する例、破裂の危険性がある例、悪性を否定できない例などが外科的切除の対象となります。

原発性肝がん

大きく分けて肝細胞がんと胆管細胞がんがあります。肝細胞がんは手術以外の内科的な治療(肝動脈塞栓療法、エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法など)の適応とならない場合、肝切除術を行います。切除の適応は、肝機能の比較的良好な単発例や主病巣の近傍にのみ副病巣を有する場合です。胆管細胞がんは今のところ肝切除以外に有効な治療法がないため、できるだけ積極的に手術を行います。門脈塞栓を行い、拡大肝切除も行っています。

転移性肝がん

大腸がん(結腸がんや直腸がん)の肝転移が対象になることが最も多く、胃がん、膵がんなどでは適応となることが少ないです。化学療法や分子標的治療薬を用いて、肝病巣を縮小させて、積極的に肝切除を行っています。

胆嚢および胆管疾患

胆嚢結石症

腹腔鏡下胆嚢摘出術が標準術式として行われています。しかし炎症が強い場合や、手術の既往があると開腹手術を行うこともあります。

総胆管結石症

まず内視鏡的乳頭切開術、経皮経肝胆道鏡下切石術などの治療を行い、それで改善しない場合、手術を行います。総胆管切開切石術とCチューブまたはTチューブを留置する手術を通常は開腹で行いますが、場合によっては内視鏡手術が可能なこともあります。

肝内結石症

経皮経肝胆道鏡下切石術などの治療を行い、それで改善しない場合や、肝内胆管に狭窄や拡張病変がある場合で片葉に限局肝萎縮がある場合は、肝切除術を行うことがあります。

急性胆嚢炎、慢性胆嚢炎、胆管炎

胆石に合併して発症することが多い疾患です。治療に反応しない例や、入院時すでに臨床症状が悪化している例では、経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)または内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(ENBD)を行います。炎症消退後、画像診断を行ったうえで、腹腔鏡下胆摘術を含めた外科的手術を行います。

胆嚢ポリープ、腺腫

10mm以上の大きさではがんを疑い、超音波内視鏡、CTなどで進展度診断を行い、手術を行います。

胆嚢がん、胆管がん

胆道がんは、診断技術が向上した現在でも進行がんで発見されることが多い疾患です。黄疸がある場合は胆道ドレナージをまず行います。その後、超音波内視鏡、CTなどで進展度診断を行い、手術を行います。しかし肝機能が低下している場合や腹膜播種、多発肝肺転移、著明な大動脈周囲リンパ節転移があれば切除手術は困難で、バイパス手術や手術以外の治療を行います。

膵臓疾患

膵仮性嚢胞、膵腫瘍

急性膵炎後や外傷後の仮性嚢胞は、経過観察が原則で、膵炎の治療に準じた保存的治療を行います。通常2カ月程度経過しても縮小傾向がない場合や、感染や出血などの合併症や圧迫症状が出現した場合、エコーガイド下に経皮的嚢胞ドレナージを行います。それでも効果が不十分な場合は胃・嚢胞吻合術や空腸・嚢胞吻合術を行います。

嚢胞性膵腫瘍

漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、膵管内乳頭粘液性腫瘍などがあります。漿液性嚢胞腺腫(SCT)はほとんど悪性化しませんが、大きくなると隣接臓器を圧排するため、約5cm以上のものは切除手術を行うことが多いです。粘液性嚢胞腺腫(MCT)は悪性のポテンシャルが高いので診断がつけば膵がんに準じた切除手術を行います。膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)は長期的に腺がんに移行することが多いので、3cm以上の場合は膵がんに準じた切除手術を行います。

膵がん

膵がんは近年増加しており、膵根治切除例とバイパスなどの姑息手術例では予後が大きく異なるため、切除を行うことが大切です。膵頭部がんには膵頭十二指腸切除術を、膵体尾部がんには膵体尾部切除を行います。門脈合併切除を積極的に行っています。切除不能例には、最終的には消化管の閉塞や黄疸を考慮して、経口摂取が可能となるようにバイパス手術を行います。当初は切除不能でも化学療法を行い、腫瘍を縮小させ、積極的な根治手術を行っています。