73副院長 中塚 秀輝看護部長 平松 貴子―「附属病院の看護は温かい」とよく聞くのですが?―平松:“温かい看護”というと、優しい対応・丁寧な対応・誠実な対応が基本ですが、それだけでは不十分で、看護師として患者に温かい看護を提供するためには、やはりきちんとした知識と技術、そして態度の三本柱が備わっていることが重要だと思っています。自分を磨いていないと、「ここで看護してもらってよかったな」「温かい看護を受けられたな」という患者の満足にはつながらないでしょう。医療は物凄いスピードで進歩していますので、学生時代に習ったことがそのまま通用するわけではありません。そのため当院の充実した研修制度を利用したり、個人でさらに学んだりしながらキャリアアップに努めています。近代的看護を確立したナイチンゲールが「看護はアート&サイエンス」と言っているとおり、科学的な根拠を理解し、さらに技術を身につけてこそ、それぞれの患者にふさわしい看護を行うことができ、温かい看護につながるのではないでしょうか。“温かい看護”は、これから先の時代にも、もっと必要になってくるでしょう。―ホスピタリティーについてのお考えは?―平松:ホスピタリティーという言葉は温かい看護と通じることですが、私たちの現場ではホスピタリティーより、「倫理的配慮」という言葉を多く使っています。いろいろな場面において困ったときには「患者にとってベストは何か」の選択肢を考え、選んで行動するようにしています。今、これからに向けて多職種が関わるチーム医療が進められています。看護師は院内ほぼすべての部署と関わりを持ちますので、多くの職種と深い関わりを持って協働できるように、それぞれの職種を理解して、さらに自分の仕事、専門性をきちんと把握する努力を続けなければと思います。―高度専門的な手術について具体的に教えてください―中塚:最近の手術の流れは、患者に負担をかけない低侵襲手術になっています。当院では内視鏡下ロボット支援手術(ダビンチ)や、心臓の弁を付け換える手術のとき、開胸をせずに血管内から大動脈弁までカテーテルを使って弁を換えるTAVI(カテーテル治療)なども取り入れています。これらの手術にはさまざまな機器類を設置できる特別な広い手術室が必要になります。当院は、ハイブリッド手術室一室を含む15の手術室、三つの血管造影室を備え、最良の高度医療を迅速に提供することを目標にしています。―ICU・CCUの管理・運営について―中塚:ICU・CCUが手術室と血管造影室とともに同じフロアにあってすべて管理できるのも当院ならではです。治療の上で非常に役立っています。どれもかなりスペースを必要とする部署ですので、このような配置や構造は全国的に珍しく、他所から見学に来られてもうらやましがられる施設ですね。西館棟を新築する際に川﨑誠治理事長(当時は副理事長)が構想されました。同フロアにあることで多職種連携も行いやすくなっています。もともと手術室やICU、血管造影室は多職種で協力して運営する部署なのですが、同じフロアにあることで緊急の対応が必要なときもすぐに応援に駆け付けられますし、普段のコミュニケーションも取りやすくなっています。これからの超高齢社会を考えると、リスクの高い患者が安全な手術や治療が受けられるためには、施設の整備がさらに必要でしょう。さらにAI活用を含めた協働も今後の課題です。法改正の影響による医療の質の低下は避けたいというのは、医療従事者みんなの願いです。それぞれの専門知識を生かしながら協力し合う多職種連携をどんどん進めていく必要があります。
元のページ ../index.html#75