川崎医大附属病院 50周年記念誌
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 1981(昭和56)年、総合診療部(現・総合診療科)において導入していた「チームリーダー制プライマリーナーシング」方式を1988(昭和63)年から全病棟に導入している。それまでは、検温係、血圧測定係、全身清拭係といった患者に必要な看護を業務ごとに担当する「機能別看護」を行っていたが、一人の患者に対して一人の看護師が入院から退院まで責任を持って担当する「プライマリーナーシング」方式に変更した。「プライマリーナース(受け持ち看護師)」は、看護計画の立案と実践、評価なども行う。この方式のメリットとして、看護師にとっては患者一人ひとりに対し個別性のある看護を提供できること、患者にとっては「何でも知ってくれている“私の看護師さん”」という安心感を提供できることにある。プライマリーナース不在時には、アソシエートナース(代行看護師)が看護計画に沿って看護を実践するため、24時間安心して療養できる環境となっている。病棟では看護師が2チームに分かれており、それぞれのチームリーダーが、医師の指示受けやメンバーへの伝達・確認などを行い、チーム単位で患者の治療を支えている。 なお、当院では2009(平成21)年から一般病棟において7対1看護体制を導入し、より手厚く安全で安心な看護を提供している。温かいタオルと心で「清拭」 看護師の二大業務のうちの「療養上の世話」については、看護師がイニシアチブをとって展開できる業務である。患者の療養生活を支えるために、開院当初からほぼ同一手順で実施しているのが「全身清拭」である。当院は、二つの容器に温湯を入れてベッドサイド26に行き、タオルで絞っては拭き、絞っては拭きを繰り返す手順を取っている。体に触れる際のタオルの温度が低下しないよう、追い湯をしながら適温の維持にも気を配っている。患者の入院期間が短縮し、業務効率化の推進のためには、おしぼりやホットタオルでの清拭も考えられるが、患者からの「あー、気持ちいい」「風呂に入れないストレスが緩和される」「おしぼりにはない爽快感がある」などの声に支えられ、現在も継続している。全身清拭中のコミュニケーションは、昔も今も患者の療養上、大切なケアの一つとなっている。 2014(平成26)年から、ベッドコントロールセンターに看護師を配置し、入院患者の受け入れに関する調整や退院支援を一元管理で行っており、緊急入院の場合もスムーズに入院病棟を決定できるようになった。多職種とのミーティング等で患者の状況を把握し、自宅への退院および在宅療養の援助や他院への転院など、包括的な支援を行っている。また、専従・専任の看護師や社会福祉士を配置することで、医療・看護・介護のサービスを切れ目なく提供し、地域の医療関係者と「顔の見える連携」によりシームレスな看護を提供できる体制を整備した。 2018(平成30)年には「入退院サポートセンター」が設置され、入院前から患者の身体的・精神的・社会的背景を把握し、多職種スタッフと情報を共有し、退院までの医療・看護・介護を支援している。入院前の面談で、患者の意向を確認し、患者・家族の意思決定支援を行い、入院後には、主治医、病棟看護師、退院支援看護師、医療ソーシャルワーカーと情報共有に努めている。入院前の面談は毎月約500件に上り、手術予定患者には周術期外来を実施して、術前の不安の軽減にも対応している。プライマリーナーシングシステム「私の看護師さん」PFMで入退院、転院の不安を解消温かい看護体制

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