く臨床現場の違和感やジレンマ、解決が難しい悩みなどに対して、誰でも気軽に相談できる体制を整えており、相談者の不安軽減につながっている。 このほか、「院内感染対策チーム」では、感染管理認定看護師が医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師とともに、院内各部署での院内感染対策の実態把握と対策指導を行っている。救命率の向上を目指すフライトナース 高度救命救急センターには13名(2023年12月現在)のフライトナースが配置されている。フライトナースとは医師とともにドクターヘリに搭乗し、事故や疾病による緊急性の高い傷病者の元へいち早く駆け付け、救命治療処置を行い救命率の向上を目指す看護師のことである。医師による処置の介助、患者や家族への身体的・精神的援助、物品管理、安全管理の役割を果たす。看護師経験5年以上、救急看護経験3年以上、救命救急に関する資格「ACLSプロバイダー」と「JPTECプロバイダー」の取得、第三級陸上特殊無線技士の資格取得、日本航空医療学会主催のドクターヘリ講習会の受講等、日本航空医療学会フライトナース委員会が設ける必須要件を満たす必要がある。 これに加え、当院では、救急外来でリーダーができること、JNAラダーⅢ以上の取得、フライトナース評価表で自己および他者評価の実施といった条件を独自に追加している。これらをクリアした者の中から高度救命救急センター役職者会議で研修者を決定し、OJT(オンザジョブトレーニング)を4~6か月実施する。その後フライトドクターおよびフライトナース認定指導者によって認可され、ドクターヘリ会議で承認の後、フライトナースとして独り立ちできるという厳しい過程が必須となっている。病院全体で患者救命に取り組むK-METシステム 当院では、2022(令和4)年3月から、それまで並行運用していた「ハリーコール(医療者招集システム)」と「RRS(院内迅速対応システム)」の二つのシステムを統合した「K-MET(Kawasaki-Medical emergency team)」システムを導入した。K-METとは、当院の緊急応援体制のことで、医師(麻酔・集中治療科、救急科、循環器内科)、看護師(ICU・CCU、高度救命救急センター)、臨床工学技士等が主なメンバーとなっている。応援要請の目安を設けており、特に現場の看護師の判断で起動できる運用としている。また、バイタルサインや尿量などの測定値だけでなく、「(患者の)何か様子がおかしい」と主観的に感じた場合でも躊躇なくK-METへの要請が行えるよう、たとえ起動後急変でなかった場合や大事に至らなかった場合でも応援要請者の行動を高く評価することを医療安全マニュアル内に明記し、異常の早期発見に努めている。 導入から一年半後の結果分析では、前システム時と比べ要請件数は63%増加、心停止での要請件数は37%減少、入院患者1,000人当たりの「心停止発生件数」は2.2人から1.4人に減少、「予期せぬ死亡件数」は1,000人当たり1.5人から0.9人に減少している。また、K-METワーキングを定期的に開催し、起動症例の振り返りや対応への課題についての議論、シミュレーションの指導など、医療者のアセスメント能力の向上や急変対応能力の向上を目指して活動している。電子記録で情報を共有し問題を読み解く 業務記録は手書きから電子記録へと徐々に移行していった。記録する情報量は多岐にわたり、以前に比べて格段に増えている。多職種でのカンファレンス記録では、情報共有が簡単にでき、会議の内容が把握しやすくなった。患者の様子を詳細に記録し、抱える問題を読み解く重要な手掛かりとなるPOMR(問題指向型診療記録)は、手書き時代と同様に多量の内容であるが、電子化により、素早い伝達と共有が可能になった。25
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