川崎医大附属病院 50周年記念誌
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24 なにもかも新しく始まった附属病院は、看護にも新しい風を取り入れた。初代総婦長・成瀬妙子は、それまでの診療介助を中心とした大学病院のあり方ではなく、看護のある大学病院として看護部を育てていきたいという方針を打ち立てた。 その実現のため「①看護専門職としての自覚と誇りをもつ。②患者を人間として理解し、健康回復および社会復帰への援助を行う。③患者のニーズを正しく把握し、適切なケアと保健指導を実践する。④常に看護の知識と技術を学び、その向上を図る。」を看護の方針とし、その初志は揺らぐことなく代々の看護部に受け継がれていった。チーム医療の一員として 当院では質の高い安心・安全な医療の提供、患者の生活の質(QOL)の向上と維持、患者の人生観を尊重した医療の実現のために、多職種により構成された医療チームがサポートに当たっている。看護師はほとんどのチームの一員となっているが、中でもいくつかのチームでは特に中心となって大きな役割を果たしている。 例えば「認知症ケアチーム」(2019年発足)は、高齢化の進行するわが国で、入院患者においても増えている認知症患者に対して、尊厳を持った対応と入院に伴う認知機能低下を最小限に留めることを目的としており、認知症看護認定看護師・精神科認定看護師が、チーム専任看護師として組織横断的な活動をしている。毎週、チームで病棟ラウンドを行い、病棟看護師の対応や身体拘束軽減のケア方法等について多職種の視点から課題を検討したり、チームと心療科医師が連携して策定した「せん妄対策のプロトコル(手順)」にしたがって、せん妄ケアを行ったりしている。また、患者とその家族が安心して入院生活を送られるよう、各病棟に「オレンジケアナース」を配置し、これらの活動を推進している。 「緩和ケアチーム」(2007年発足)は、がん看護専門看護師、緩和ケア認定看護師、がん放射線療法看護認定看護師が、医師、臨床心理士、薬剤師、医療ソーシャルワーカー等多職種が関わる緩和医療の中心となり、患者や家族のニーズや精神面に対して多角的にアプローチし、症状緩和やQOLの向上のため活動している。 そして、当院の入院患者やその家族に関する解決困難な医療倫理的諸問題について、がん看護専門看護師が中心となり、多職種で対応する「医療倫理コンサルテーションチーム」を、2018(平成30)年に立ち上げた。チームは、倫理的判断のプロセスを大切にしており、患者および家族が満足し、医療者も納得できる最善のチーム医療の実践を目指している。また、医療者が抱看護の誇りを受け継ぐ時代に先駆けた柔軟かつ的確な対応安心・安全で質の高い看護のために看護の今とあゆみ

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