川崎医大附属病院 50周年記念誌
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良き医療福祉人の育成column-人工心肺を操作する勝村達喜 23 附属病院の大きな使命の一つとして将来の良き医療福祉人の育成がある。医科大学の5年生、6年生は国が認めた臨床実習生(医学)として参加型の臨床実習を行っている。医大生以外にも看護学生をはじめ学園のほぼすべての学生が附属病院で臨床実習を行っており、その数は年間延べ7万人に及ぶ。19の基本領域すべての専門医が揃っていることも、当院ならではの学びの環境となっている。 「臨床教育研修センター」は、もともと病棟エリアだった本館棟11階に設け、当院の病棟をそのまま再現した「模擬病棟」と8つの演習室を設置。高機能の各種シミュレーターに加え、2022(令和4)年度にはシミ 第3代病院長、勝村達喜は1970(昭和45)年、川崎医科大学に採用されると手術に必要な器械器具や実験室の準備と整備にあたった。人工心肺の選定で価格4千万円の米国ペンコ社製を発注、1975(昭和50)年3月に附属病院に届いた。人工心肺を使用した手術は4月15日、心室中隔欠損症の23歳男性に対して、勝村が執刀して行われ無事成功した。附属病院での開心術の第一例だった。当時は人工心肺を扱える技士がいなかったため、勝村の後輩医師に操作を頼んだという。勝村が在任中の20年間で行った心臓手術は1,413例、血管手術は2,900例、総手術件数は1万1,000例に上った。 1976(昭和51)年10月には、附属病院第一例目の虚血性心疾患に対する中四国初の冠動脈バイパス手術が、藤原巍医長(当時の副部長)によって行われた。手術では、心停止させるための変圧器で低圧電流を流し、心室細動を起こしている間に血管を吻合させた。その後は米国の心停止液を使うようになった。最先端の技術が評判を呼び、胸部・心臓血管外科には患者が詰めかけた。ュレーション・実習管理のための学習管理システムを導入した。当院や学園の学生のみならず、地域の医療系学生・医師・看護師などすべての医療従事者が、卒前・卒後教育における基本的手技の演習およびチーム医療の一員としての技法を取得することが可能となっている。 「良医育成支援センター」は、医師の臨床研修を初期から専門医取得までシームレスに支援する部門として2020(令和2)年に新設された。専門性のある医師の育成のため卒後臨床研修(初期臨床研修)とレジデント研修(後期専攻医研修)を行い、患者から信頼される、人間性が豊かで、幅広い守備範囲の知識と技能を有した専門性、研究マインドを持ち、医学に貢献できる「良医」の育成を目指している。最先端の技術が評判を呼んだベテランの心臓外科医 勝村達喜臨床教育研修センター、良医育成支援センター

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